Trapeziste〜『カヒミ・カリィ着うた・着メロsearch』 カヒミ・カリィ

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Trapeziste
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『前衛芸術カヒミ・カリィの4作目』
エレクトロニカの浮遊感とフリージャズのグルーヴが複雑に構成された傑作です。その音はまるで荘厳な夢に誘われるよう。深遠で激しいものを表現する両音楽の性格が最大限ラジカルに鳴っているんです。例えばエレクトロニカの序曲ではさながら宇宙遊泳のように光と闇が交差し、深遠で大きなサウンドトリップをみせれば、フリージャズの2「Trapeziste」では一気に大地から熱が湧き出て、開放的なホーンセクションが幾重にも噴出し奔放に鳴り渡ります。この2曲の流れは圧倒的な音の洪水で当にカオス。しかしこの中に凄まじい増幅感を感じられるのが今作のおいしいところです。
一方3「About The Girls」でのパジャマと女の子の話や6「Lexie」のウイスパーボイスが前に出る静的な音楽では、メロディのかわいさや官能もあります。ですがそこにも細部に施された奥行きある音作りが、今作の一貫したカラーを常に感じさせ隙がありません。コンセプト作品らしい連続性を持ちながら静と動、光と闇がどんどん押し寄せてくるサウンドでした。

他方今作は円環状に巡るトータル作品の展開を持ち、詩人としての彼女の才能が読解の大きな鍵になってきます。例えば10「Kinski」とは菊地成孔氏によれば怪優と呼ばれた、破天荒な俳優クラウス・キンスキーに象徴された醜悪な父であり、少女が今作の夢から目を醒ました前にそびえる不気味な存在だと言います。つまり序曲の詩で台風のように全てを奪い去っていった男こそ父だったというわけです。更に重要なのはヒロインが2では忘れたいと想いつつも1などで父は希望を残していった等と父を肯定する点です。そして10の詩ではミサ曲のような讃美や従属性を歌うんですね1番だけを。その精神は虐げられる子供特有の無防備さなのです。夢の中であるどの曲にも父の影がのびてくるのですから、今作のコンセプト性は非常に高い完成度をもっています。

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