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『本田美奈子、歌と愛の生涯』
本田美奈子さんが38歳の若さで、急性骨髄性白血病で急逝されてから3年が過ぎようとしている。
私はこれまでは、本田美奈子さんのあまり熱心なファンとは言えず、アイドル時代も歌のうまい子だなと想った程度で、ミュージカルやクラシック(クロスオーバー)に取り組んでいるという噂を聞いたときも、“歌うこと”に対する彼女の意欲と熱意に賛嘆しつつも、なかなか聴くチャンスがつかめずに時間が過ぎてしまい、そして悲報に接することになってしまった。
最近やっと気持ちを整理して、彼女の遺してくれた作品に接し、そのあまりの美しさ、特に清純な高音の驚異的な伸びにはしばし言葉を失ってしまった。ありきたりの言葉だが、もっと早く聴かなかったことがあまりに悔やまれる。
ふだんは芸能界や芸能人の内幕をテーマにした書籍などにはあまり関心がないのだが、アイドル系歌手としてのデビューから20年、その間、ポップス、ロックバンド結成と解散、ミュージカル、そしてクラシックへと、常に歌手そしてアーティストとしての新たな可能性に挑戦し続け、そして志半ばにして病に倒れるまで、短くも大きな輝きに満ちて駆け抜けた本田美奈子さんの生涯を幾分たりとも知りたくて本書を手に取った。
読み進んで心を打たれるのは、彼女の歌に対するひたむきな心と、人そして人生に対する真摯で愛情に満ちたその生き方である。特に、急性骨髄性白血病と診断されて緊急入院、そして抗がん剤の投与や骨髄穿刺といった過酷な闘病生活の中で、彼女が周りの人々に見せる前向きな明るさや心遣いなどの、強さとそれに支えられた愛情の深さである。自分など、もし彼女と同じ病魔に襲われたなら、はたしてこれほどの強さと愛情でまわりに勇気を与えれるような生き方が出来るのか、はなはだ自信がない(冷や汗)。彼女の、この明るさと勇気と愛情とが、あの清純で伸びやかな美しい歌唱を支える土台であったとは、感動もまたひとしおである。
そして、もうひとつ知ったのは、クラシックを「日本語の歌詞で歌う」ことへの彼女のこだわりである。「私はクラシックと思って歌わない。新しいものとして歌いたい」と語ったと書かれているが、日本人として日本人のために古典の名作に新たな生命を吹き込んで歌いたいという彼女のスタンスを明らかに示していると思う。
とにかく、すべてが前向き、そして勇気とやさしさと愛情に満ちた彼女の生涯だった。いま、改めて彼女が遺してくれた数々の素晴らしい歌に心から「ありがとう」を言いたい。心を込めて。
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